症例報告
網膜電図で消失型を示すも術後視機能の回復を得られた眼球鉄錆症の1例
根岸 美紗希
1
,
伊藤 格
1
,
菅原 太郎
2
,
井田 洋輔
1
,
日景 史人
1
,
大黒 浩
1
1札幌医科大学眼科学講座
2札幌医科大学病理診断学
キーワード:
眼球鉄錆症
,
鉄性異物
,
網膜電図
,
消失型
Keyword:
眼球鉄錆症
,
鉄性異物
,
網膜電図
,
消失型
pp.1201-1207
発行日 2021年12月5日
Published Date 2021/12/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000002371
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眼球鉄錆症は眼内に中長期的に鉄性異物が滞留することで,網膜機能を含めた視機能が徐々に低下する疾患である。我々は術前網膜電図で消失型を示し良好な視機能が期待できなかったが,異物除去後に視機能回復が得られた眼球鉄錆症の1例を経験したので報告する。
症例は52歳,男性。201X年秋頃に左眼への異物飛入を自覚し近医眼科を受診も経過観察となっていた。翌年1月より左眼の視力低下を自覚,水晶体前嚢に色素沈着を認め,ぶどう膜炎を伴う白内障の診断で手術を目的として同年3月に当科紹介となった。当科初診時,視力は左眼矯正0.2,鼻側の角膜および虹彩に穿孔痕を認めた。水晶体前嚢への色素沈着が強く眼底は透見不能,Bモード超音波検査で異常なしも,眼窩部CT検査で左眼の下方赤道部網膜に高輝度所見が認められ,既往から鉄性異物の残留が示唆された。術前の網膜電図は左眼で消失型を示し,網膜機能障害のため術後視力が期待できないものと推測された。6月に超音波水晶体乳化吸引術+硝子体切除術+異物除去術を施行し,水晶体前嚢と硝子体より病理学的に鉄成分が認められ,眼球鉄錆症と診断した。初回手術は眼内レンズ未挿入で終えていたが,術後に視機能の回復が得られたため後日毛様溝縫着術を施行した。その3か月後の視力は0.8まで回復し視野も保たれていたが,網膜電図は消失型のままであった。今後視機能が低下する可能性も考えられ,慎重に経過観察を行う必要がある。
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