特集 房水のサイエンス
3 角膜内皮と房水
山口 剛史
1
1東京歯科大学市川総合病院眼科
キーワード:
角膜内皮
,
前房水
,
炎症
,
涙液
,
角膜移植
,
虹彩
Keyword:
角膜内皮
,
前房水
,
炎症
,
涙液
,
角膜移植
,
虹彩
pp.1051-1057
発行日 2021年11月5日
Published Date 2021/11/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000002334
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個体を構成する臓器はいくつもの組織から成る。さらに組織は細胞からできていて,細胞が生存する環境は,全身を循環する血液やリンパ液,免疫細胞で恒常性が維持されている。ローマ帝国時代のガレノス(図1)の「体液病理説(血液などの体液が疾患を引き起こすという説)」は,体液の定義は正しくなくても,疾患によって血液中の物質が変化するという概念は現在の医学に十分通じる。発熱して内科を受診すると,血液検査をしてさまざまな血中物質の濃度を測定して診断し,治療しながら血中マーカーをモニタリングするのは標準医療の一部になっている。すなわち,疾患による血液の「環境変化」は「細胞応答」に呼応する形で反映される。眼科は,白内障の水晶体混濁,緑内障の視神経乳頭陥凹,網膜剥離や黄斑浮腫など,直接,疾患が観察でき診断につながるため,他科のように生体“サンプル”の測定で疾患原因を探る研究が比較的進んでこなかったのかもしれないし,房水や硝子体液で特定の物質が変化する知見が得られても,臨床的に直接観察する以上の有用性が見出しにくかったともいえよう。しかし,眼疾患,特に角膜移植において,長期予後を考えるとき,「環境変化と細胞応答」という視点はとても重要ということが近年の研究で明らかになってきた。
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