特集 ここが知りたい緑内障眼底読影の基本
序論
富田 剛司
1
1済安堂井上眼科病院(東京都千代田区)/東邦大学医療センター大橋病院眼科
pp.297-297
発行日 2021年4月5日
Published Date 2021/4/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000002081
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今月の特集は「ここが知りたい緑内障眼底読影の基本」である。緑内障は,眼底や視神経乳頭に緑内障に特徴的な変化が生じ,その結果(その変化に整合して)緑内障に特徴的な視野障害を呈する疾患である。私が理解する限りでは,緑内障で生じる変化は眼内では,網膜神経節細胞の変性消失(その始まりはアポトーシス),網膜神経線維の束状の脱落(欠損),篩状板の菲薄化と後方弯曲であり,脳内では外側膝状体や視中枢の細胞の変性であり,それらは緑内障早期から生じるといわれている。ただ問題は,以上挙げた変化がひとつあれば緑内障であるかといえばそうではない点である。網膜神経節細胞の変性をきたす病態は緑内障以外でも報告されているし,網膜神経線維の束状欠損(NFLD)は緑内障だけではなく多発性硬化症の特徴的所見でもある。篩状板の菲薄化と後方弯曲は強度近視眼でもしばしば観察される。あえて緑内障に特徴的なことといえば,以上挙げた変化がすべて連動してみられることかもしれない。一方,眼底を見ただけで,“これは緑内障だ”とわかる変化もある。私個人はリムノッチングと乳頭周囲脈絡網膜萎縮(いわゆるPPA)の出現(今までなかったのに生じてくる,あるいは拡大していく)とその変化部位に生じるNFLDが緑内障の最大の特徴だと思っている。問題は何故そうなるのかがわかっていないことかもしれない。とはいえ,画像の特徴を捉えて分類するのは今後AIの独壇場となるかもしれず,今回の特集は将来的には無意味になるかもしれない。しかしながら,AIは分類(診断)はできてもその違いが何故生じたかまでは考えてくれない(と思う)。
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