症例報告
角膜に広範囲な浸潤をきたした結膜扁平上皮癌の2例
脇田 遼
1
,
馬詰 和比古
1
,
後藤 浩
1
1東京医科大学臨床医学系眼科学分野
キーワード:
眼表面扁平上皮新生物
,
マイトマイシンC
,
高度視力低下
,
OSSN
Keyword:
眼表面扁平上皮新生物
,
マイトマイシンC
,
高度視力低下
,
OSSN
pp.169-174
発行日 2021年2月5日
Published Date 2021/2/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000002030
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眼表面扁平上皮新生物(ocular surface squamous neoplasia:OSSN)の多くは角膜輪部より発生し,症例によっては徐々に病変が拡大していくが,広範囲の角膜浸潤をきたすことはまれである。角膜への広範囲な浸潤により,高度な視力低下を生じたOSSNの2症例を報告する。
症例1は90歳,女性。5年前に結膜腫瘍に対して近医で生検が施行され,良性腫瘍の診断を受けていた。その後,病変が拡大し,1年前から視力低下するも放置し,当科初診時の右眼矯正視力は0.09であった。外科的切除と再建を行ったが,高齢かつ遠方からの来院のため,後療法は施行せずに経過観察をしていた。しかし,術後半年で局所再発が確認され,マイトマイシンC点眼による後療法を施行した。局所化学療法施行後19か月間,再発はない。症例2は80歳,男性。12年前から左眼の著しい視力低下を自覚していたが,放置していた。当科初診時の視力は光覚弁で,生検による診断確定後,腫瘍縮小を目的としたマイトマイシンC点眼治療を行い,引き続き外科的切除と眼表面の再建を行った。術前のマイトマイシンC点眼で高度のアレルギー反応を生じたため後療法は施行していないが,術後33か月間にわたり再発なく経過している。
高齢者に広範な角膜浸潤と視機能低下をきたしたOSSNの2症例を経験した。それぞれ異なる治療法で対応し,経過観察期間に限りはあるが,経過はいずれも良好である。
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