連載 眼の組織・病理アトラス・61
結膜の扁平上皮癌
猪俣 孟
1
1九州大学
pp.1762-1763
発行日 1991年11月15日
Published Date 1991/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410900938
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結膜の扁平上皮癌squamous cell carcinomaは,中高齢者にみられる結膜の悪性腫瘍のうち,比較的頻度の高い疾患の1つである。1976年から1985年までの10年間に九州大学で病理組織学的検査が行われた結膜腫瘍124例のうち,結膜上皮由来の腫瘍状病変は15例で,そのうちの5例が扁平上皮癌であった。
本症の病因は不明であるが,結膜が長年にわたって外的な刺激にさらされて起こることが考えられている。塵や光線や風によって常に刺激をうける瞼裂に一致した部位,とくに9時部および3時部の角膜縁結膜に好発する。外的刺激にさらされると,結膜上皮は肥厚し,結膜下組織は変性する。さらに,結膜上皮細胞の角化keratinizationや異角化dyskeratotic changeなどの化生meta-plasiaが起こる。その結果生じる光線角化症actinic keratosisや異形成dysplasiaは,結膜上皮の前癌状態あるいは前癌腫性上皮性病変pre-cancerous epithelial lesionsと呼ばれる。
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