特集 人に死を招く動物—人・昆虫・寄生虫
クマによる人身被害
大井 徹
1,2
1石川県立大学生物資源環境学部環境科学科
2日本クマネットワーク
pp.154-160
発行日 2017年2月15日
Published Date 2017/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208613
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2016年の5月下旬から6月上旬にかけ,秋田県鹿角(かづの)市十和田でクマによる死亡事故が連続して4件発生した.いずれの事故でも遺体が食害されており,クマが人間を捕食するために襲撃したことが強く疑われた1).普段は森の中でひそやかに暮らし,おとなしいはずのクマがなぜこのような悲惨な事故を引き起こしたのか,加害グマは1頭だったのか複数であったのか,テレビ,新聞,雑誌などに盛んに取り上げられ,大きな社会的関心を呼んだ.
このようなクマによる人身被害者数は,2000年以降,年平均78人に及んでいる.クマに襲われた場合,鋭い爪や牙による攻撃を強い力で受けるので,死亡事故に至らずとも傷口が複雑になるとともに,骨折を伴うことが多く,重症となる場合が多い.当然ながらこのような事故は可能な限り避けたいものである.
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