綜説
高齢者における緑内障手術の選択
丸山 悠子
1,2
,
森 和彦
2
1済生会滋賀県病院眼科(栗東市)
2京都府立医科大学眼科学教室
キーワード:
高齢者
,
緑内障手術
,
手術選択
Keyword:
高齢者
,
緑内障手術
,
手術選択
pp.579-586
発行日 2020年6月5日
Published Date 2020/6/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000001698
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現在の日本では65歳以上が人口に占める割合が28.4%と過去最高になっており,世界一の高齢化社会となっている。高齢者の緑内障診療では,全身疾患に伴う薬物治療の限界や高齢者特有の問題点が数多く潜んでいる。加齢に随伴する特徴としては,1)全身疾患の合併(心機能/呼吸機能の低下によるβ遮断薬の使用制限,難聴),2)加齢随伴疾患の合併(加齢黄斑変性症,白内障,網膜血管閉塞性疾患,眼瞼下垂,角膜内皮/上皮障害),3)認知症の合併(点眼アドヒアランス不良,自覚検査の信頼性欠如),4)難症例の増加(チン小帯脆弱,核硬化,瞼裂幅狭小化,deep-set eyes,薄い結膜,複合機序による緑内障,濾過胞関連合併症),5)余命との関連(高齢末期緑内障例をどうするか)が考えられる。こうした高齢者の緑内障手術症例の特徴としては,落屑緑内障が年齢とともに増加し,他の続発緑内障は減少していること,白内障トリプル症例が多いこと,そして先ほど述べたように加齢に随伴する特徴との関連で難症例や全身疾患の合併例の増加が挙げられ,余命との関連で高齢末期緑内障例をどうするかも含めて手術のタイミングや術式の選択が重要になってくる。一般的に手術のタイミングに関しては,症例ごとにリスクとベネフィットを天秤にかけて手術時期を決定していくことになるが,高齢者においては特に余命,点眼アドヒアランス,手術難易度等,症例ごとに総合的な判断が必要である(図1)。
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