特集 斜視に対するA型ボツリヌス毒素(BTX-A)注射療法
1 急性内斜視・輻湊痙攣に対するBTX-A療法
清水 有紀子
1
1ツカザキ病院眼科(姫路市)
キーワード:
A型ボツリヌス毒素
,
急性内斜視
,
後天共同性内斜視
,
斜視治療
,
ボツリヌス毒素療法
Keyword:
A型ボツリヌス毒素
,
急性内斜視
,
後天共同性内斜視
,
斜視治療
,
ボツリヌス毒素療法
pp.1471-1475
発行日 2019年12月5日
Published Date 2019/12/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000001472
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
多くの科でさまざまな疾患や部位に用いられているA型ボツリヌス毒素(以下BTX-A)は,収縮力を弱めたい筋肉に注射すると,神経終末に変化を起こして筋収縮を抑制する作用を持つ。そのBTX-Aを内斜視の治療目的で用いる場合は,内直筋に注射すると,内直筋の収縮が抑制されて内転作用が弱まり,内斜視が矯正される。BTX-A療法の大きな利点として,治療が簡便で外来でも施行でき,低侵襲であることが挙げられる。実際の治療は,点眼麻酔後に結膜の上から筋電計の電極付き注射針を刺入し,筋電図の反応を確認して薬液を注入することにより,数分で施行できる(図1)。一方,BTX-Aの欠点として,投与量に対する効果の不安定さと,薬理作用の持続期間が3~4か月であることが挙げられる。これはBTX-Aの作用によって生じた神経終末の変化が徐々に回復することで,筋の収縮力が復活するためである。したがって,BTX-Aによって生じた眼位の変化も元に戻ることが予想され,実際に恒常性斜視の症例では治療の数か月後には元の眼位に戻ることが多い。しかし,一部にBTX-Aの薬理作用の持続期間をはるかに超えて,治療効果の持続する症例が存在する。具体例として,眼球運動制限を伴わない急性内斜視の治療例のなかに,BTX-A療法単独で眼位を維持し,治癒と呼べる症例も散見される。本稿では,機能的な原因によると考えられる急性内斜視・輻湊痙攣に対するBTX-A療法について述べる。
Copyright © 2019, KANEHARA SHUPPAN Co.LTD. All rights reserved.