特集 第1部 最近の眼科薬物治療 Ⅱ.水晶体(白内障)
3 老眼治療の可能性
常吉 由佳里
1,2
,
根岸 一乃
2
1独立行政法人 国立病院機構 埼玉病院眼科(和光市)
2慶應義塾大学医学部眼科学教室
キーワード:
老眼(老視)
,
調節力
,
新薬
Keyword:
老眼(老視)
,
調節力
,
新薬
pp.1039-1042
発行日 2019年9月30日
Published Date 2019/9/30
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000001360
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老視とは,加齢に伴う水晶体の弾性(外力によって変形した物体が,その外力が除かれた時にもとの形に戻ろうとする性質)の低下を主とした変化によって,眼の調節力が低下して近方視が困難になる状態を指す。多くの場合40~45歳頃に症状を自覚し,50歳代の間に調節力はほぼ失われる1)。2015年の時点で世界の老視人口は18億人にのぼり,人口増加と平均寿命の延伸によって2030年には老視人口は21億人となってピークに達すると推定されている2)。老視の治療としては,最も一般的には老視用眼鏡による矯正が行われるが,近年普及してきている老視用コンタクトレンズ,その他種々の屈折矯正手術なども選択肢となり得る。しかし,老視用眼鏡を使っての生活には掛け外しの煩わしさがあり,コンタクトレンズや屈折矯正手術による治療を行っても,水晶体の変形による調節と比べればQuality of Visionの点で大きく劣っているのが現状である。このような状況のなかで,点眼薬による非侵襲的な老視治療の可能性について近年さまざまな研究がなされており,将来的には選択肢のひとつとして普及する可能性がある。本稿では,老視の薬物治療の可能性について,現在の状況を概説したい。
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