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屈折異常の問答—老眼はどうして起つて来るのでしようか
戸塚 清
1
1関東逓信病院眼科部
pp.11-14
発行日 1958年11月10日
Published Date 1958/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201752
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眼は写真器と良く似た器官です.写真器では遠くにピントを合せたり,近くにピントを合せたりするにはレンズを前へ出したり,後へ引いたり致します.眼では眼球の中に水晶体と云う恰度レンズの様な形をしたものがありますが,之はその位置を前後する事はありませんが,水晶体自体が弾力を持つて居て遠くを見る時は薄くなり,近くを見る時は厚くなり,つまり厚さを調節する事によつて眼前何れの距離をも見る事が出来る様になつて居ます.写真器よりは眼球の方が進歩した機械であると云う事が出来そうです.
水晶体の持つ弾力性は年を取るにつれて減つて行きます.若い中は遠くも近くも自由に見る事が出来たものが,年を取つて来ると薄くなる事,即ち遠くを見る事は,若い頃と殆ど同様に可能なのですが,近くを見る事が段々出来難くなつて来ます.こう云う症状が気附かれ出すのは,正視の人で大体44〜45才頃からです.遠視の人はもつと早く起り,近視の人では出現が遅れがちですが,水晶体が厚くなり難くなつて居る状態は何れの場合でも大体似かよつて居ります.
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