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抗炎症療法では,次々と臨床の現場に参入してくる分子標的薬の登場によりパラダイムシフトが起こっている。眼科領域では,ぶどう膜炎を中心に新規抗炎症療法の開発が行われている。しかし,ぶどう膜炎の種類が多岐にわたり,ガイドラインや診断基準が存在しないなどの特殊性から,個々のぶどう膜炎について大規模な臨床試験を行うことが難しく,エビデンスの構築や新規治療法の開発がしにくい背景が従来からあった。近年の基礎研究の急速な進歩と臨床研究から得られるエビデンスの蓄積と,インフリキシマブ(レミケードⓇ)やアダリムマブ(ヒュミラⓇ)を代表とする治療薬の登場により,ヒトぶどう膜炎の臨床を取り巻く環境も劇的な変化を遂げつつある。インフリキシマブは,ぶどう膜炎においてTNFαといったサイトカインを標的とする初めての分子標的薬で,これまでの副腎皮質ステロイド薬による免疫抑制療法とは大きく異なり,このような新規治療法の開発にあたってはモデル動物や試験管内を基盤とした基礎研究に依るところが大きい。ぶどう膜炎における新規治療法の開発には,まず実験的自己免疫性ぶどう膜網膜炎(experimental autoimmune uveoretinitis:EAU)に代表されるぶどう膜炎の動物モデル(図1)を用いて同定した病因となる分子や免疫細胞に対して,それを標的とした治療法を開発し,その結果をもとにしてヒトへ応用されてきた。また,近年ではサイトカインなどの液性因子やDNAマイクロアレイに対する網羅的解析のほか,次世代シークエンサーの登場による手段の増加により,患者検体から直接治療標的分子を同定することが可能となり,ヒトで得られた知見を再び動物実験や試験管内の研究に還元し,新規治療法の開発につなげるというトランスレーショナルリサーチも行われている。本稿では,最近のぶどう膜炎における抗炎症療法の開発の現状や経緯,問題点を中心に論述する。
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