私の経験
抗悪性腫瘍剤であるエルロチニブ塩酸塩(タルセバⓇ)が原因と考えられた角膜穿孔の1例
吉村 彩野
1
,
細谷 友雅
1
,
岡本 真奈
1
,
五味 文
1
1兵庫医科大学眼科学教室
キーワード:
角膜潰瘍
,
角膜穿孔
,
エルロチニブ塩酸塩
,
corneal ulcer
,
corneal perforation
,
erlotinib hydrochloride
Keyword:
角膜潰瘍
,
角膜穿孔
,
エルロチニブ塩酸塩
,
corneal ulcer
,
corneal perforation
,
erlotinib hydrochloride
pp.1523-1528
発行日 2018年11月5日
Published Date 2018/11/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000000945
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要 約
背景:エルロチニブ塩酸塩は非小細胞肺癌などに経口投与される上皮増殖因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤である。重篤な眼科的副作用として角膜穿孔,潰瘍が挙げられている。今回我々は本薬剤使用中に角膜穿孔をきたした1例を経験したので報告する。
症例:74歳男性。2週前からの両眼視力低下と眼脂を自覚し,近医眼科受診。両眼の角膜潰瘍を指摘され,紹介受診となった。肺腺癌の脳転移を認め,2か月前よりエルロチニブ塩酸塩内服およびベバシズマブ点滴により加療中であった。初診時矯正視力は右眼(0.15),左眼(0.05),両眼の角膜輪部上皮は粗造で,両眼の鼻側に角膜潰瘍を認めた。潰瘍部の細胞浸潤は軽微であったが前房内細胞を認めた。診察所見や全身諸検査上,細菌性や自己免疫疾患などによる角膜潰瘍は否定的であったため,原因として疑わしいエルロチニブ塩酸塩内服を中止した。中止後徐々に上皮化が進行したが,3週後右眼の角膜菲薄化部位の穿孔と虹彩嵌頓,前房消失を認め,層状角膜移植術を施行した。左眼は瘢痕を残すものの治癒した。
考按:エルロチニブ塩酸塩は重篤な角膜障害を引き起こす可能性がある。両眼性の角膜潰瘍をみたら,全身投与薬の副作用も念頭に置き,診断・治療を進める必要がある。
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