特集 涙道疾患の最新情報
3 涙道疾患による非感染性角膜潰瘍
井上 英紀
1
1愛媛大学医学部眼科学教室
キーワード:
角膜潰瘍
,
角膜穿孔
,
慢性涙嚢炎
,
涙小管炎
Keyword:
角膜潰瘍
,
角膜穿孔
,
慢性涙嚢炎
,
涙小管炎
pp.1297-1303
発行日 2023年11月5日
Published Date 2023/11/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000003394
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涙嚢炎や涙小管炎は涙道の感染性疾患である。涙嚢炎は高齢者の女性に多く,鼻涙管の閉塞または狭窄により,涙液や涙嚢内容物が貯留し,そこに感染を生じることが原因である。涙嚢炎は急性涙嚢炎と慢性涙嚢炎に分類できるが,いずれも所見は涙嚢部からその周囲の発赤腫脹,結膜充血,流涙,多量の眼脂を主訴とする。一方,涙小管炎は正確な発症機序は不明であるが,涙小管粘膜が破綻,感染を起こし,菌石が形成されることが契機となっていると考えられている。中高年の女性に多く片眼性である。難治性の結膜炎として漫然と加療されていることが多い。流涙,多量の眼脂と結膜充血を主訴とし,涙点から涙小管部の発赤腫脹を伴う疾患である。これらの涙道の閉塞性疾患は,ときに感染性角膜潰瘍を併発することは以前より報告されている1)。一方で,慢性涙嚢炎と涙小管炎は,まれに非感染性の角膜潰瘍を誘発することが,主に本邦から報告されてきた2)~8)。昨年,我々はこの涙道疾患起因の非感染性角膜潰瘍をlacrimal drainage pathway disease-associated keratopathy(LDAK)と名づけ,その臨床的特徴について報告した9)。近年,LDAKの報告は増えている。LDAKの発生機序については,涙道疾患の免疫反応により涙道内で産生されたマトリックスメタロプロテアーゼや涙道内の菌から分泌された毒素が眼表面に逆流することにより,角膜潰瘍が発症する機序が現在考えられているが,まだ解明はされていない。
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