眼科手術の適応―最新情報
7.涙道 2)TS-1内服による涙道閉塞の治療
柏木 広哉
1
1静岡県立静岡がんセンター眼科(駿東郡長泉町)
キーワード:
TS-1
,
涙道閉塞
,
涙管チューブ
,
涙道内視鏡
,
仮道形成
,
防腐剤含有人工涙液
Keyword:
TS-1
,
涙道閉塞
,
涙管チューブ
,
涙道内視鏡
,
仮道形成
,
防腐剤含有人工涙液
pp.1187-1192
発行日 2017年9月30日
Published Date 2017/9/30
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000000161
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近年,抗腫瘍薬の眼部副作用(眼障害)についての報告が増えている1)〜4)。2 人に1 人がんにかかる時代で,数多くの抗腫瘍薬が開発されたこと,生命寿命も延びていることがその一因である。10年来問題となっているテガフール・ギメラレシル・オテラシルカリウム配合薬(ティーエスワンⓇ:以下TS-1)による涙道障害(図1)や角膜障害の頻度が最も多い。TS-1 は胃癌術後の補助療法5)や,最近では膵臓癌の術後補助療法6)を中心に幅広い癌に使用されている。この障害は,視力や視野などの視機能を低下させることも多く,日常生活の質の低下,精神的不安感の増強を招くことも多い。なお,有害事象共通用語基準CTCAE(Common Terminology Criteria for AdverseEvents) v4.0 日本語訳JCOG 版の眼障害(流涙)Grade 分類は,眼科臨床所見と解離しているので注意が必要である(表1)。流涙の発症率は10〜25%との報告がある7)〜9)。当院では発症時期は服用開始から平均約3 か月で,急速に進行して難治になることも少なくない。発症機序は,薬剤が血漿中から涙液へ移行し,その涙液が涙道に直接接することで,涙道の扁平上皮の肥厚と間質の線維化をきたし,その結果,涙道の狭窄をきたすとされている。また血行性の可能性も示唆されている。当院では,2007 年から流涙の症例が急増しこの10 年間で400 名以上の患者を経験した。ここに3 年間(2009 年から2012 年)のデータを中心に述べる。
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