臨床報告
弱視治療を行ったTreacher Collins syndromeの1例
小野 里規子
1
,
原 直人
1
,
藤山 由紀子
2
,
新井田 孝裕
1
1国際医療福祉大学病院眼科
2国際医療福祉大学保健医療学部視機能療法学科
キーワード:
Treacher Collins症候群
,
弱視
,
斜視
,
眼窩
,
輻湊
,
Treacher Collins syndrome,amblyopia
,
strabismus
,
orbit
,
vergence
Keyword:
Treacher Collins症候群
,
弱視
,
斜視
,
眼窩
,
輻湊
,
Treacher Collins syndrome,amblyopia
,
strabismus
,
orbit
,
vergence
pp.835-841
発行日 2017年8月5日
Published Date 2017/8/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000000099
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Treacher Collins syndrome(以下TCS)は胎生7〜8 週以前に分化する中胚葉の第1 鰓弓,第2鰓弓の発達障害により生じる下顎顔面骨形成不全症である。5p32-33 に座位するTreacher Collins症候群遺伝子の変異による常染色体優性遺伝であり,発症頻度は25,000〜50,000 人に1 人とされている1)。両側の顔外側の形成不全を主症状とし,下眼瞼外側1/3 の傾斜や部分欠損,頬骨低形成,強度の下顎低形成による小顎症で鳥様顔貌が特徴的である。耳介変形,外耳道閉鎖,難聴を伴い,28%は口蓋裂を合併する2)。小顎症による舌根沈下で上気道閉塞を起こしやすく,乳児期早期に気管切開が必要な例も多い。また精神発達遅滞を伴うことがある3)が,難聴による二次的な精神発達遅滞の場合もあり早期から補聴器を用いることで言語発達を促している。その他に眼症状として強度屈折異常(58%),斜視(37%)や弱視(33%),不同視(17%),鼻涙管閉塞,眼瞼下垂,眼瞼内反症,睫毛乱生を生じることがある4)。本邦でのTCSの報告は1991 年の時点で141 例5)で,その多くが耳鼻咽喉科からのものであり,斜視や弱視の治療に関するものはきわめて少ない。今回,両眼の強度角膜乱視による弱視と外上斜視を併せ持つTCS に対し,継続的な眼鏡装用で視力が向上した1 例を経験したので報告する。
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