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先月につづいて,またひとつ,新しい新生児の症候群をご紹介します。先天性に下顎の発育不全,すなわち小顎症(micrognathia)を示す新生児のあることは,諸君もすでによくご存知でしょう。有名なのはPierre Robin Syndrome:ピエール・ロバン症候群といって,小顎症があり,口蓋破裂をともない,舌根が下がって,自分で自分の気道をふさいでしまって呼吸障害を示す症候群です。下顎が小さい,発育が悪いというと,すぐこのピエール・ロバン症候群を私たちは考えてしまうのですが,もうひとつ小顎症を示す症候群として忘れてはいけないのが,ここにあげたTreacher Collins Syndrome:トレッチャー・コリンズ症候群です。
このTreacher Collins症候群は下顎骨のみならず,それを中心として顔面の下半分の発育不全症といったら当たるような先天異常です。まず,気がつくことは下顎が小さいことで,下顎骨が発育していないので,あごがないような印象をうけます。そして顔全体をみると,額を底辺とした逆三角形にみえます。下顎骨の発育不全のため,下顎は細く小さく,舌根は沈下して気管(喉頭)を閉鎖し,自分で自分の呼吸障害をひき起してしまいます。多くは口蓋破裂を合併していますが,口蓋破裂はなくても,一般の先天異常児と同様に口蓋は非常に高くなっています。もうひとつの特徴は耳で,耳は低位耳介といわれるように普通の新生児と比較すると一段と低い位置についています。そして耳介は変形し,時には耳介の形がわからないような小耳症や耳介の欠損もあり,外耳道は閉鎖している症例も多くみられます。また眼は眼裂間が広く,左右の眼は遠ざかってついており,眼裂の外側は下がり,いわゆる典型的な「たれ眼」となっています。
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