連載 伝わらないコトバたち
第6回
「剥離骨折と裂離骨折」
松浦 晃正
1
1北里大学医学部整形外科学/救命救急医学
pp.1027-1027
発行日 2022年9月19日
Published Date 2022/9/19
DOI https://doi.org/10.18885/JJS.0000001117
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「剥離」とは「はぎはなすこと,はがれはなれること」と広辞苑に記されています。常用される言葉で,その意味は誰もが皆イメージしやすいのではないかと思います。手術操作としても「剥離」という用語は使用されます。一方,「裂離」という語は広辞苑を含めた国語辞典には記されておらず,一般的な用語ではないようです。Avulsionには「引き抜き」という意味があり,avulsion fractureという語は筋腱付着部や靱帯付着部に外力が加わり,その起始部の骨が引っ張れられることにより生じる骨折を意味します。日本整形外科学会により編集された『整形外科学用語集』ではこれを「裂離」とよび,第5版増補まではavulsion fractureという用語は,母床から離れているかどうかに重きを置いた「剥離」とは区別して「裂離骨折」としておりました。しかし,「剥離骨折」と言う習慣が根強くあり,第6版では裂離骨折,剥離骨折と2通りの言い方を認めました。賛否両論があり,最新版である第8版ではこの2通りの言い方は変更されておりませんが,継続課題となっております。裂離骨折は上腕骨内側上顆や骨盤の上・下前腸骨棘・坐骨結節,大腿骨小転子,膝蓋骨,脛骨粗面に多くみられます。
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