連載 伝わらないコトバたち
第2回
ギプスとキャスト
河村 直
1
1北里大学病院救命救急センター/整形外科
pp.94-94
発行日 2022年1月19日
Published Date 2022/1/19
DOI https://doi.org/10.18885/JJS.0000000873
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骨折を保存的に治療する際に患部の固定・安静を目的として使用する道具をギプス(正式にはギプス包帯)またはキャストといいます。その歴史は,1852年にヨーロッパはフランドル地方(現在のオランダやベルギーあたり)の軍医であったアントニウス・マタイセンによって始まりました。戦場で骨折した兵士を治療のために後方へ送る際に,安静目的に負傷した四肢をギプス包帯で固定して送ったといわれています。ギプス(Gips)はドイツ語であり,キャスト(Cast)は英語ですが,同じものを表します。ギプスはドイツ語で石膏(せっこう)を意味します。現在では簡便さもあって,プラスチックギプスの使用が主流となっていますが,当初は石膏をまぶした木綿布を濡らして患部に巻き付けて固めることで,患部を固定していました。ここから,この固定具自体をギプスと呼ぶようになりました。日本は,以前,ドイツから医学的知識を輸入していたことから,ドイツ語の医学用語が今なお多く使用されています。このギプスも同様の経緯で,ドイツ式の呼び名であるギプスが日本でも一般的に使用されるようになりましたが,後日,英語であるキャストも使用されるようになり,現在のように併用されるに至ったものと思われます。
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