- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- サイト内被引用
ヘモグロビンA1c(hemoglobinA1c;HbA1c)が高いと細小血管障害(網膜症,腎症,神経障害)の合併頻度が高まるということは,大規模臨床試験において繰り返し証明されてきた。その細小血管障害ほどではないが,大血管障害もHbA1cとの関連を認め,HbA1cが高くなると大血管障害のリスクも高まる(図1)。大血管障害は2型糖尿病患者の重要な合併症であり,死因でもある。従来は空腹時血糖の改善に糖尿病治療の力点が置かれていた。しかし,HbA1cを改善させるためには空腹時血糖の改善だけでは不十分である。国際糖尿病連合が策定した「食後高血糖の管理に関するガイドライン」では,正常耐糖能を「75g経口ブドウ糖負荷試験(oral glucose tolerance test;OGTT)での負荷後2時間の血糖値140mg/dL未満」と定義しており,食後血糖の測定タイミングは食後2時間を推奨している。またアメリカ糖尿病学会は『Standards of MedicalCare in Diabetes-2017』において,食後血糖を180mg/dL未満に抑えることによってHbA1cの改善が期待できるとしている。普段の血糖値は高くないが食後短時間だけ血糖値が急上昇する現象を高血糖スパイクとよぶ。食後高血糖は膵β細胞の機能低下に伴って最初にみられる糖代謝異常であり,糖尿病患者では高血糖スパイクはごく一般的に認められる。84%の2型糖尿病患者に160mg/dLを上回る食後高血糖が記録されたとの報告4)もある。そこで本稿では,高血糖スパイクの発生機序とそれが引き起こす弊害,そして高血糖スパイクを治療することのメリットについて概説し,その病態生理学的意義を明らかにする。
Copyright© 2017 MEDICAL VIEW CO., LTD. All rights reserved.