特集 DOACの常識・非常識-抗血栓療法新時代に向けて-
識る トラフ時になぜ血栓はできないのか
矢坂 正弘
1
1国立病院機構九州医療センター 脳血管センター脳血管・神経内科
キーワード:
Warfarin
,
血液凝固
,
血栓症
,
抗凝固剤
,
Apixaban
,
Dabigatran
,
Rivaroxaban
,
Edoxaban
Keyword:
Dabigatran
,
Rivaroxaban
,
Anticoagulants
,
Blood Coagulation
,
Thrombosis
,
Warfarin
,
Apixaban
,
Edoxaban
pp.43-46
発行日 2017年1月9日
Published Date 2017/1/9
DOI https://doi.org/10.18885/J03097.2017113620
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ワルファリンは持続的に抗凝固作用を示し続けるが,直接作用型経口抗凝固薬 (direct oral anticoagulant;DOAC)は1日1回内服と2回内服ではそれぞれ1 日に1回ずつと2回ずつ,血中濃度のピークとトラフがある。血中濃度がピーク 時には十分な抗凝固作用を示し,心房細動症例でも静脈血栓塞栓症症例でも左心 耳や深部静脈に血栓ができないことは容易に理解できるが,トラフではDOACの 血中濃度の低下とともに抗凝固作用が減弱し,左心耳や深部静脈内に血栓が形成 されそうに思える。しかし,血栓はできないのである。だからこそ,心房細動に おける脳梗塞発症予防効果や静脈血栓塞栓症の再発予防効果は,ワルファリンと 比較して同等かそれ以上という結果が第Ⅲ相試験で示されたわけである(図1)。 血中濃度が低下し,抗凝固作用が低下するトラフで血栓ができないのはなぜか? この現象を理解するキーは生理的凝固阻止因子の役割であろう。生理的凝固阻止 因子が十分な活性を有していれば,容易には血栓はできないというわけである。 本稿では抗凝固薬と生理的凝固阻止因子の2系統が補完しながら抗凝固療法を行 うハイブリッド抗凝固療法という概念で,DOAC療法中にトラフで血栓ができな い理由を解説する1)。
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