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はじめに
人工股関節全置換術(total hip arthroplasty; THA)は,現在では一般的な整形外科治療となっ てきている。従来は比較的高齢者が手術対象で あったが,近年は活動性の高い若年者にも適応が 広がろうとしている。 わが国では,現在,人工関節置換術(股,膝,肩, 肘,その他人工骨頭を含める)は20万症例以上行 われており,年々増加し続けている。THAの原 疾患の60%以上が発育性股関節形成不全であるた め(図1),THAを受ける患者の年齢のピークは60 歳台であり,人工膝関節全置換術の70歳台と比較 してやや若い患者層といえる1)。 わが国の平均寿命は女性が86歳を超え,さらに 上昇し続けていることを考慮すれば,人工股関節 の耐用性は30年間以上必要である。そして,特発 性大腿骨頭壊死症など40歳台が発症ピークの股関 節疾患なども考慮すれば,若年の患者は活動性も 高く,現在の人工股関節の耐用年数ではまだまだ 十分とはいえない。 そのため,人工関節に求められる機能は,従来 の疼痛を除去するだけでなく,高い活動性に対応 するインプラントデザイン,骨との固着性および 摺動面の長期耐久性が求められる。 THAの臨床成績に大きく影響する因子の1つ,ポ リエチレン摩耗粉による骨溶解は,いまだ解決さ れていない問題である。表面酸化処理ジルコニウ ム(OxZr)合金骨頭は,金属の強度とセラミックス の低摩耗を併せもつ材料であり,本稿では,OxZr 合金のOXINIUMTM(Smith & Nephew社)に関して 解説し,ポリエチレン摩耗やインプラントの臨床 成績を,文献およびオーストラリア人工関節レジ ストリのデータを基に紹介する。
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