臨床室
低摩耗性人工股関節全置換術後の偽腫瘍を疑う1例
津田 浩平
1
,
徳永 裕彦
,
松矢 浩暉
,
市川 宜弘
,
吉川 尚孝
,
齋藤 貴徳
1関西医科大学附属滝井病院 整形外科
キーワード:
X線診断
,
寛骨臼
,
抗凝固剤
,
股関節脱臼
,
骨移植
,
MRI
,
変形性股関節症
,
人工器官機能不全
,
人工股関節
,
Polyethylene
,
股関節置換術
,
セメントレス人工関節
,
亜脱臼
,
偽腫瘍
,
摩耗
Keyword:
Acetabulum
,
Anticoagulants
,
Hip Dislocation
,
Hip Prosthesis
,
Magnetic Resonance Imaging
,
Radiography
,
Prosthesis Failure
,
Osteoarthritis, Hip
,
Bone Transplantation
,
Arthroplasty, Replacement, Hip
,
Polyethylene
pp.1363-1367
発行日 2015年12月1日
Published Date 2015/12/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00764.2016086568
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症例は66歳女性で、11年前に両側股関節痛のため両松葉杖歩行で受診し、X線で遺残性亜脱臼性股関節症の末期像を呈した。JOAスコア27点(疼痛10点、屈曲6点、外転0点、歩行能力5点、日常生活動作6点)であった。両側臼蓋骨移植術併用人工股関節全置換術(THA)を行い、術後は特に問題なく定期的に経過観察した。左股関節前面の違和感を訴え腫瘤を触知した。腫瘤は弾性硬で、圧痛、発赤、熱感はなかった。X線像で左側のみ明らかな偏摩耗を認めた。両側ともストレスシールディングは認めたが、骨吸収像はなく人工関節は安定していた。JOAスコアは100点で、杖を使用せず、通常に生活を送り活動性は高く、機能的にも問題なく無症候性であった。MRIで左股関節前面にT1強調画像低信号領域、T2強調画像高信号領域を呈し、90×40×25mm大の嚢腫が確認された。血液検査で炎症反応を認めず穿刺で淡赤色透明の液を30ml採取し培養結果は陰性で、細胞診では滑膜細胞のみで悪性所見はなかった。急速な偏摩耗および腫瘤を認めるため再置換術を勧めたが、無症候性のため手術の同意を得られず、経過観察となった。術後X線を比べた結果、2013年まで明らかな偏摩耗を認めなかったが、その後1年間で急激な偏摩耗を認めた。2010年~2013年の摩耗量に変化はなく2013年迄の9年間の平均年線摩耗量は0.011mmであったが、その後の1年間で2.1mmの線摩耗量を認めた。3ヵ月経過時のMRIでは穿刺後に腫瘍の増大は認めず、縮小傾向で、腫瘍の緊満感も軽減した。深部静脈血栓症予防のため抗凝固薬内服を開始し経過観察している。
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