特集 手関節尺側部痛をきたす疾患の診断と治療
尺骨突き上げ症候群の診断と治療
恵木 丈
1
1大阪府済生会中津病院 整形外科
キーワード:
X線診断
,
関節鏡法
,
変形性関節症
,
腱障害
,
内固定法
,
骨プレート
,
MRI
,
鑑別診断
,
手首外傷
,
理学的検査
,
三角線維軟骨
,
保存的療法
,
下橈尺関節
,
尺側手根伸筋
,
尺骨突き上げ症候群
,
豆状骨関節
Keyword:
Conservative Treatment
,
Arthroscopy
,
Bone Plates
,
Diagnosis, Differential
,
Fracture Fixation, Internal
,
Magnetic Resonance Imaging
,
Osteoarthritis
,
Physical Examination
,
Radiography
,
Wrist Injuries
,
Triangular Fibrocartilage
,
Tendinopathy
pp.830-837
発行日 2017年8月19日
Published Date 2017/8/19
DOI https://doi.org/10.18885/J00282.2017355391
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はじめに
種々の要因による尺骨手根関節の関節軟骨変 性,あるいはその変性過程のことを尺骨突き上げ 症候群(ulnar impaction syndrome;UIS,あるい はulnocarpal abutment syndrome;UCAS)とよ び,主な原因は尺骨手根関節への慢性圧迫性過荷 重(chronic compressive overloading)によるもの である。 UIS発症リスクのなかで最も重要な因子は尺骨 プラス変異であり,ニュートラルバリアンスから 2.5mmプラスになることで,尺骨手根関節への荷 重は20%から42%に増加する1)。また,橈骨傾斜 が正常から40°背屈することで,同じく65%に増 加する。つまりUISは特発性のみならず,橈骨遠 位端骨折,Essex-Lopresti損傷,骨端線損傷など 外傷要因によっても発症する。 UISでは尺骨手根関節における慢性圧迫性過荷 重のため,その関節周囲組織の変性も生じる。そ の代表が三角線維軟骨複合体(triangular fibrocartilage complex;TFCC)の変性断裂や月 状骨・三角骨近位の関節軟骨軟化,そして月状三 角骨間靱帯変性断裂であり,Palmer2)によりその 変性進行程度に則して分類されている(表1)。
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