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はじめに
胸郭不全症候群(thoracic insufficiency syndrome; TIS)はCampbell1)が提唱した疾患群の総称である。 これは成長による正常な胸郭の発育が阻害される 病態として定義される疾患群であり,さまざまな 疾患が含まれる。早期発症側弯(early onset scoliosis;EOS)のなかで幼小児期に高度な悪化を 示す症例はすべてこのTISに含まれるといっても過 言ではなく,その治療には多くの医師が矯正固定 手術を駆使してチャレンジしてきたが,結果は散々 たるものであった。 VEPTR®(Vertical Expandable Prosthetic Titanium Rib,DePuy Synthes社)はCampbellら2) がTISの治療として開発した内固定材料であり, わが国においては2008年12月21日(臨床使用は 2009年7月1日より)に認可されてから,早9年と なっている。しかし,その認可は前例のない大変 険しい道のりであったと表現でき,全例登録が必 要,初期3年の症例については術後5年間臨床成績 を報告する,とした内容が認可条件となった。そ れ以後,毎年定期的に使用状況と治療成績を報告 し,それも昨年12月で最終となり,正式に認可さ れる段階にきている。本インストゥルメンテー ションシステムの認可においては,治験なしでの 認可として施設基準と適正使用基準が遵守される 必要があったため,この間にわが国で基準を満た して手術を行ってきた病院は5病院にすぎない。 VEPTRはTISのなかでも,特に肋骨異常を伴う 先天性側弯症にその効果を発揮することが当初か ら予想できたため,growing rod法とならび成長 温存手術の代表的手術として世界で受け入れられ てきた。 しかし,一方でその問題点も臨床経験を基に少 なからず報告されるようになってきており,本稿 では筆者の経験を踏まえ,TISでも特に肋骨異常 を伴う先天性側弯症に対象を絞って,その利点と 問題点についてまとめる。
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