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浸潤性膵管癌(以下,膵癌)は膵腫瘍の約9割を占めており,乏血性腫瘍として描出される。膵癌の検出や進展度評価には,dynamic造影CTを適切なタイミングで撮像することが重要である。当院では,膵癌が疑われる場合には,単純CTに加えて,後期動脈相(膵実質相),門脈相,平衡相を含む腹部dynamic造影CTを撮像している。術前で動脈の情報が必要な場合には,早期動脈相も追加している。単純CTでは,膵石や石灰化の有無,膵周囲脂肪織の濃度上昇の有無を評価している。後期動脈相は正常の膵実質が強く染まっているタイミングであるため,通常は乏血性腫瘍である膵癌とのコントラストが明瞭になる。主膵管の拡張もわかりやすく,拡張した膵管を膵頭部側にたどっていくことで,小さな膵癌が見つかることもある。逆に平衡相では,膵癌が豊富な線維性間質を反映して正常の膵実質よりも濃く染まっていることが多い。膵癌の間質の程度によっては,後期動脈相における膵実質とのコントラストが付きにくく,平衡相のみで病変が検出できることもあるため注意を要する。また,腫瘍よりも尾部の膵実質は随伴性膵炎によって造影効果が修飾されている場合も多いため,膵癌と正常膵との濃度差に関しては膵頭部と比較したほうがわかりやすい。膵の乏血性腫瘍の鑑別には,膵癌のほかに,乏血性の膵神経内分泌腫瘍,充実性偽乳頭状腫瘍(solid pseudopapillary neoplasm;SPN),転移性膵腫瘍,限局性の自己免疫性膵炎が挙げられる。膵癌が尾側膵管の拡張を伴いやすいことに加えて,浸潤傾向が強いという特徴から,近傍の血管に沿った軟部影や周囲脂肪織の毛羽立ち像がこれらの疾患との鑑別点になる。
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