第54回日本外科学会宿題報告要旨
膵切除—脂肝を中心として
大野 良雄
1
Yoshio ONO
1
1大阪大学医学部第2外科教室
pp.310
発行日 1954年5月20日
Published Date 1954/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407201434
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膵臓に種々の外科的侵襲を加えた際,肝臓に脂肪の出現所謂脂肝(Fettleber)が起る事は古くより認められ,外科学的立場より,又生化学或は形態学的方面より研究され,今日でも生物学の重要な課題である.然も近年膵臓外科の進歩とともに再び脚光を浴びるに至つたのである.然して膵臓を全剔出或いは膵臓に種々の外科的侵襲を加えた際におこる脂肝は他の諸条件下(例えば饑餓,或いは蛋白欠亡時)におこる脂肝と同一であるか否か将又これ等ら脂肝の発生起因は膵臓の内分泌的因子か,外分泌的因子によるものか,或いは両者の欠除によるものかは極めて興味ある問題である.然してこの脂肝の出現に対し,外科医として如何なる態度をとるべきかは誠に重要問題である.ここにおいて余は生化学的組織学的並びに組織化学的立場より検討し,特に細胞の機能的動態を中心として,肝細胞の変化,脂肝防止物質の作用機点並びに膵臓剔出による内分泌系の変化を明らかにし,併せて人間の膵臓全剔出の可否を論ずる.
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