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は じ め に
医学・医療の高度化と細分化がすすむ現代において,整形外科診療は,患者の生活の質(QOL)・社会復帰に直結する重要な役割を担う診療科である一方で,侵襲性の高い医療行為,多職種・多工程にわたる診療プロセス,超高齢患者や併存疾患を有する患者への対応など,きわめて高いリスクを内包する診療領域となっている.
こうした状況の中で,患者安全はもはや個々の医療者の注意や経験の問題ではなく,医療システムとして理解・実践されるべき専門領域として確立しつつある.世界保健機関(WHO)が提唱する患者安全の概念や行動計画,ならびに患者安全教育カリキュラムは,医療にかかわるすべての職種・すべての診療段階において,安全を「後付け」ではなく「前提条件」として組み込むことの重要性を示している1).
特に,将来医療の中核を担う医療系学生や若手医師に対する患者安全教育は,単なる知識の付与にとどまらず,医療システムを俯瞰し,チームで医療を提供し,エラーから学び続ける姿勢を涵養する教育として位置づけられるべきである.患者安全は,特定の専門分野に閉じた学問ではなく,整形外科診療を含むあらゆる医療実践の基盤に横断的に組み込まれる必要がある.
筆者は北里大学病院医療安全推進室長として,また整形外科医として,日常診療・医療安全管理・医学教育の三つの立場から,整形外科領域における患者安全の課題と可能性に向き合ってきた.本稿では,WHOの患者安全ガイドラインおよび国際的な患者安全の枠組みをふまえつつ,整形外科医に特有のリスク構造,教育としての患者安全の意義について整理し,医学教育の中で整形外科医に対してどのような患者安全教育が求められるのかを概説する.

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