Japanese
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特集 整形外科領域におけるAIの応用
Ⅵ章.AIによる手術・治療成績予測
4.AIを用いた骨肉腫患者に対する術前化学療法の効果判定と予後予測
Evaluation of neoadjuvant chemotherapy effectiveness and prognosis prediction in osteosarcoma patients using artificial intelligence
川口 健悟
1,2,3
,
美山 和毅
1,4
,
遠藤 誠
1
,
備瀬 竜馬
4
,
小田 義直
2
,
中島 康晴
1
K. Kawaguchi
1,2,3
,
K. Miyama
1,4
,
M. Endo
1
,
R. Bise
4
,
Y. Oda
2
,
Y. Nakashima
1
1九州大学大学院整形外科
2九州大学大学院形態機能病理
3九州大学大学院医療経営・管理学
4九州大学大学院システム情報科学研究院情報知能工学部門
1Dept. of Orthop Surg., Graduate School of Medical Sciences, Kyushu University, Fukuoka
キーワード:
deep learning
,
osteosarcoma
,
neoadjuvant chemotherapy
Keyword:
deep learning
,
osteosarcoma
,
neoadjuvant chemotherapy
pp.640-643
発行日 2025年5月25日
Published Date 2025/5/25
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei76_640
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はじめに:AI研究の二つの視点と本研究の位置づけ
近年,AIの臨床応用が盛んに行われている.私見ではあるが,アカデミアにおけるAI研究は,その意義によって大きく二つに分類できる.一つ目は業務の効率化を目的としたものである.例として,手書きアンケート用紙の自動読み取りモデルや,問診情報から鑑別疾患をリストアップするモデルなどがあげられる.これらは現場の労力を削減するために有用であるが,教師データとして与えられたヒトの能力を超えることはできない.一方,二つ目は新たな知見の発見を目的とするものである.Insilico Medicine社のAI創薬やAlphaFoldによる蛋白質構造予測などがこれに該当する.個々のタスクにおいては教師データの範囲内での能力を示すが,全体としてはこれまでヒトの力では到達できなかった領域に到達することが可能となり,新たな知見を生み出す.この視点に立つと,アカデミアでのAI研究は後者の方向性が本来の目的に合致しているといえる.
AI研究が盛んになって数年が経過した現在,業務効率化を目的とした研究は加速度的に増えている.今後,アカデミアにおけるAI研究では,モデルの作成自体をゴールとするのではなく,AIを新たな知見を生み出すための「ツール」として活用する視点が求められる.このような視点に基づき,臨床現場に新たな知見を提供することを目的としてわれわれが行った研究の一端1)をご紹介する.

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