転移性脊椎腫瘍に対する術後歩行能力不良の危険因子

Risk factors for postoperative unfavorable ambulatory status after spinal surgery for metastatic spinal tumor

【要　旨】

　目　的：転移性脊椎腫瘍に対する手術療法は，歩行能力を改善し生活の質（QOL）の向上をめざして行われる．しかし，その期待に反し術後に歩行能力不良の結果となる症例も存在する．本研究の目的は全国規模のデータベースを用いて，転移性脊椎腫瘍に対する手術の術後に歩行能力不良であった危険因子を調査することである．

　対象および方法：2018～2019年にDiagnosis Procedure Combination（DPC）データベースに登録された症例から転移性脊椎腫瘍に対する手術を行った症例を抽出した．術後歩行能力不良を ① 退院時歩行不能，② 退院時の歩行能力が入院時より悪化のいずれかと定義し，交絡因子を調整した解析を行った．

　結　果：1,786例の解析の結果，術後歩行能力不良例は597例（33％）であった．術後歩行能力不良の危険因子は男性［オッズ比（OR）：1.43，p＝0.002］，椎弓切除（OR：1.55，p＝0.034），Charlson併存疾患指数7以上（OR：1.37，p＝0.014），術前歩行不能（OR：6.61，p＜0.001）であった．

　結　論：転移性脊椎腫瘍に対する椎弓切除は，後方要素のみの転移など限定的な病態もしくは併存症のため侵襲的な手術の危険性が高い場合に適応される．DPCデータベースを用いた本研究では，椎弓切除は全体の33％を占めた術後歩行能力不良の危険因子の一つであった．