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は じ め に
成人の前腕骨骨折では,解剖学的整復内固定が良好な機能成績を獲得するために求められる.そのためには,プレートを用いた観血的整復内固定術(open reduction and internal fixation:ORIF)が一般的となる.骨長,アライメント,回旋といった解剖学的整復が必要な理由として,橈骨と尺骨が手関節と肘関節を構成し,前腕の回旋運動に寄与するからである.本稿では,前腕両骨骨折の自験例を呈示し,これらに関する報告をまとめ考察した.
前腕骨骨折は高エネルギー損傷と低エネルギー損傷のどちらも原因となるが,もっとも一般的なメカニズムは腕を伸ばした状態で前腕に軸圧が加わることである.骨折の分類としてはAO/OTA分類が用いられることが多い.成人の場合,治療法としては不全骨折であれば保存療法が選択されるが,それでもキャストの装着期間は長くなる.そのため,わずかでも転位があればORIFを行う.
手術アプローチは,橈骨に対してはHenry approachまたはThompson approachが用いられるが,筆者は橈骨近位1/3に骨折が存在する場合でもHenry approachを用いている.多施設後方視的研究では,橈骨近位1/3の骨折に対する両アプローチの比較において合併症に差がないことが報告されている1).尺骨では尺側手根伸筋と屈筋の間からアプローチする.ただし,開放骨折の場合は両骨ともに開放創を利用したアプローチとなり,柔軟な対応が求められる.
術後の有害事象としてはインプラント関連合併症,偽関節,術後神経損傷,再骨折が報告されている2,3).コンプレッションプレートでORIFを行った症例の近年のシステマティックレビューでは,患者報告アウトカムや関節可動域などの術後転帰は比較的良好なものの,24%になんらかの有害事象がみられており,軽度の障害は通常ある程度持続すると報告されている3).

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