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連載 最新原著レビュー
前腕骨骨幹部プレート抜去後の骨萎縮の回復
-――有限要素解析を用いた骨強度評価
Recovery of forearm bone strength after plate removal:a finite element analysis study
松浦 佑介
1
Y. Matsuura
1
1千葉大学大学院整形外科
1Dept. of Orthop. Surg., Graduate School of Medicine, Chiba University, Chiba
キーワード:
forearm fracture
,
bone atrophy
,
plate fixation
Keyword:
forearm fracture
,
bone atrophy
,
plate fixation
pp.1323-1328
発行日 2023年11月1日
Published Date 2023/11/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei74_1323
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【要 旨】
目 的:前腕骨骨幹部骨折に対するプレート固定術後,骨癒合が進行し骨萎縮が発生することが知られているが,この骨萎縮が完全に回復する時点はまだ明らかになっていない.本研究の目的は,プレート抜去後の骨強度の経時的な変化を調査し,骨強度の回復過程を解明することである.
対象および方法:対象は前腕骨骨幹部骨折でプレート固定術を受け,抜去手術を予定している患者である.前腕全体のCTをプレート除去前,抜去後1ヵ月,3ヵ月,6ヵ月で撮影した.患者特異のCT有限要素解析により,軸方向荷重(N)に対する前腕の骨折強度を予測し,骨強度と定義した.その骨強度を各時点で計測し,健康な側の骨強度と比較して評価を行った.
結 果:対象患者の平均年齢は40.4歳であり,プレート固定から除去までの期間の平均は27.5ヵ月であった.除去直前の骨強度は47%まで低下しており,この数値は年齢,橈骨または尺骨の骨折,AO分類,開放骨折,プレートの種類に関係なく一定であった.除去後1ヵ月,3ヵ月,6ヵ月の骨強度は,それぞれ66%,85%,97%と推定された.尺骨遠位端の骨強度は前腕のほかの部位に比べ萎縮が強く,回復が遅い傾向がみられた.
考 察:骨萎縮の回復速度は部位により異なることが確認され,特に尺骨遠位部の骨萎縮は注意が必要であることが示唆された.患者特異のCT有限要素解析を活用することで,個々の患者の骨萎縮の程度を評価し,再骨折を予防する可能性がある.
結 論:プレートの除去後,骨強度は3~6ヵ月で回復し,6ヵ月目にはほぼ完全に回復することが示された.
© Nankodo Co., Ltd., 2023