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連載 卒後研修講座
日常診療における骨・軟部腫瘍診断のピットフォール
Pitfalls for the diagnosis of bone and soft tissue tumors in daily practice
朴木 寛弥
1
K. Honoki
1
1奈良県立医科大学骨軟部腫瘍制御・機能再建医学
1Dept. of Orthop. Oncology and Reconstructive Medicine, Nara Medical University, Kashihara
キーワード:
bone and soft tissue tumor
,
etiology
,
diagnosis
,
biopsy
Keyword:
bone and soft tissue tumor
,
etiology
,
diagnosis
,
biopsy
pp.51-59
発行日 2024年1月1日
Published Date 2024/1/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei75_51
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は じ め に
骨・軟部腫瘍は,2020年の世界保健機関(WHO)分類では良性・悪性を合わせて200近くに及ぶ種類の腫瘍が分類されており,悪性だけでもその種類は70種近くにのぼる.日常の骨・軟部腫瘍診療においてまずなすべきことは,生検による病理診断を要するか否かという判断である.臨床において病歴の聴取とともに重要であるのは,自らの手で腫瘍を触診し,サイズ,硬さ,局在,可動性などを自らの手で感じ,またそれによって患者が圧痛や放散痛などを感じるかをみることで,皮下に局在する脂肪腫などはこれらだけでおおよそ診断の見当がつくこともある.また,主要な腫瘍については好発年齢,好発部位を把握しておくことが診断にきわめて有用で,特に骨腫瘍においてはこれらと画像所見から診断をある程度絞り込むことができる.一方で,軟部腫瘍においては,脂肪腫など一部の腫瘍は臨床所見と画像診断のみでほぼ生検を要しないと判断できるものもあるが,一般には非特異的な画像所見が多く,最終的に生検を要するにいたるものが相当数にのぼることは否めない.その判断をするためには,超音波やポジトロン断層撮影法PET-CTなども含めて,可能な限りの情報収集を心がける必要がある.生検を要すると判断した場合には,そのルート,採取部位の検討が非常に重要で,悪性腫瘍の可能性も必ず念頭におき,超音波やCTあるいはイメージガイド下に行うことで生検の精度を高めることも大切となる.
本稿では臨床所見,画像所見から診断にいたるまでの道筋をたどりながら,日常診療における骨・軟部腫瘍診断のピットフォールについて述べたいと思う.
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