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は じ め に
超高齢社会であるわが国(高齢化率29.1%1))の重要な問題の一つとして,高齢者の健康寿命と平均寿命の差があげられる.健康寿命とは「健康に日常生活を送れる期間」のことであり,2019年時点での健康寿命と平均寿命の差は男性8.73年,女性12.06年とされ2),日常生活に制限のある期間は長い.この差を短縮するためには,要支援・要介護となる高齢者を減らす対策が必要となる.2019年の国民生活調査によると,要支援・要介護となる原因として骨折・転倒と関節疾患の割合が合わせて21.1%であることから3),高齢者において運動器の障害は要支援・要介護の原因となる.
日本整形外科学会は,2007年に運動器の障害による要介護の状態や要介護リスクの高い状態を表す新しい言葉として「ロコモティブシンドローム(ロコモ)」を提唱した4,5).その後,2013年に「ロコモ度テスト」を発表し,2015年にロコモ度1,ロコモ度2からなる臨床判定値が制定された.しかし,ロコモの改善率についての対処法が不足しているといった問題点が浮き彫りとなり,2020年にロコモ度3が制定された4,6).これにより,ロコモ度の群分けはロコモ度1,ロコモ度2,ロコモ度3となった.
2020年に制定された基準では,ロコモ度1は「移動機能の低下が始まっている段階」,ロコモ度2は「移動機能の低下が進行し,自立した生活ができなくなるリスクが高くなっている段階」,ロコモ度3は「移動機能の低下が進行し,社会参加に支障をきたしている段階」と定義される(表1)4).ロコモ度3が新たに制定されたことで,社会参加に支障をきたしている高齢者をみつけることができると予想される.しかし,新しい基準を用いたロコモの重症度と高齢者の身体機能の関連について検討した報告は,われわれが渉猟しえた範囲では見当たらない.
本研究の目的は,ロコモと判定された高齢女性の身体機能がロコモ度の進行によってどのように変化していくのかを検討するために,ロコモ度1~3と高齢女性の身体機能との関連について調査し,骨粗鬆症,サルコペニア,運動器不安定症の診断基準をもとにカットオフ値を設定し,それらに相当する患者の割合についても調査することである.なお,本研究では,2015年に臨床判定値が制定されたロコモ度をロコモ度1と旧ロコモ度2とし,2020年に発表されたロコモ度をロコモ度1,新ロコモ度2,新ロコモ度3と表現した.
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