私論
メンタルタフネスと手術
中川 裕介
1
1東京科学大学大学院軟骨再生学准教授
pp.1228-1228
発行日 2024年11月1日
Published Date 2024/11/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei75_1228
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本稿を執筆している最中にウィンブルドンの男子決勝をテレビ観戦した.アルカラス選手,ジョコビッチ選手の両者の高い技術もさることながら,重要なポイントで最高のプレーができるメンタルの強さに驚嘆した.私自身は硬式テニスではないが金沢大学軟式庭球部に所属し,ソフトテニスに6年間打ち込んだ.テニスはメンタルスポーツといわれ,精神状態がプレーに大きく影響する.私は一時期,相手サーブをリターンするレシーブで極度に精神的プレッシャーがかかり,レシーブが入らなくなるという不調に陥った.部活の先輩である神経内科の先生に診ていただき野球選手のスローイングやゴルファーのパッティングで出る,“イップス” に似た状態になっていると指摘をいただいた.克服するためにテニスのメンタルトレーニングの本を複数読み,メンタルトレーニングを取り入れた.例えば,テニス選手が “ウーン” とか “アァー” とか声を出しながらストロークしているのをテレビで見ると思うが,球を打つ時に息を吐くことで,ストロークの際の気持ちを安定化させることができる.人間は緊張状態になったときに呼吸が浅く,早くなったり,逆に息を止めてしまったりする.呼吸のコントロールはメンタルコントロールでよく使われる手法である.またルーチンの設定というのもよく行われる.例えば,コートには左足から入る,サーブの前に3回球をつく,そういったプレーの前のルーチンを守ることに意識を集中して,気持ちをフラットに保つという手法である.このようなメンタル改善の手法を取り入れた結果と仲間たちの支えがあり,大学6年生の夏の西日本医科学生総合体育大会までソフトテニスプレイヤーとして全うできた.
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