書評
『臨床論文デビュー――抄読会 “最短・最速” 攻略術』
吉井 俊貴
1
1東京医科歯科大学整形外科教授
pp.1086-1086
発行日 2024年9月1日
Published Date 2024/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei75_1086
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- 文献概要
本書は,英語論文にまだ慣れていない若手医師を主な対象とした「論文読解入門」である.20年以上前,私が研修医であったころは,今のように論文をダウンロードしてPDFで保存するという時代ではなく,医局にある『The Journal of Bone and Joint Surgery(JBJS)』誌や『Spine』誌をコピーしてホッチキスでとめて読むというスタイルであった.当時,英語論文をどのように読むかを指導されたことはなく,当然ながら最初はスラスラ読めない.知らない英単語と悪戦苦闘しながら,赤ペンで線を引き必死に読んだものである.研究デザインの詳細などわからないことも多かったが,論文を通じて欧米の医療に触れることは刺激的であった.当時は「日本の常識」と「世界の常識」に乖離があることも多かった.たとえば,脊椎の手術後,2週間の予防的抗菌薬投与を行っている病院もあったが,英語論文では3日間程度しか投与されていないことに驚いた(もちろん今ではもっと短縮されている).また骨折治療におけるランダム化比較試験(RCT)なども多く,鎖骨骨幹部骨折の保存vs.手術,脛骨骨幹部骨折の髄内釘vs.プレートなどキャッチーなトピックの論文は今も記憶に残っている.本書は英語の臨床論文を読むための初歩的な手引きであるが,論文を読むうえで知っておくべきエッセンスがコンパクトにまとまっており,非常に読みやすく,ぜひ若手の先生方は抄読会を担当する際に,本書を手にとって読んでいただきたいと思う.
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