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は じ め に
頚部神経根症は自然寛解すると考えられているが,長期経過での難治例は多い.筆者が頚部神経根症に対する手術的治療を行うようになったのは30年前であり,内服・坐薬・カラー固定などの保存的治療で改善しない重症例に対して前方除圧固定術を選択していた.前方からの神経根除圧確認は困難であるため,ヘルニアや椎体骨棘を可及的に切除して椎間を開大固定するという手技であり,痛みは改善するが,しびれや麻痺の改善は乏しい印象であった.当時は前方手術の合併症をふまえて,自然寛解を期待し神経根症に対する積極的な手術的治療は行っていなかった.
24年前から保存的治療と術前検査のために神経根造影・ブロックを行うようになり1),椎間孔拡大による後方除圧術を行うようになった.前方手術で起こる気道狭窄や嚥下障害といった重篤な合併症がなく,直視下に神経根の除圧確認が可能であるが,椎間関節を1/2以上切除しないようにしていたため除圧不足による痛み・しびれ・麻痺の遺残例があり,固定していないために再狭窄や反対側発症を経験し,術後成績は安定しなかった.
その後,神経根造影による狭窄部位診断により椎間関節切除範囲を計画するようになり2),前方固定を併用した時期を経て3),wavy rodを使用した後方固定を併用するようになった4).固定術の併用で椎間関節切除範囲に制限のない十分な神経根除圧が可能となり,しびれや麻痺を含めて術後の中短期成績は格段に改善した.後方固定併用が困難な場合には,現在でも前方固定を併用している.本稿では,固定隣接椎間障害による多数回手術や両側障害といったさまざまな病態の長期経過神経根症の手術的治療例を提示し,自身の罹病経験を加えて頚部神経根症の長期経過と手術方法を考察した.
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