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特集 変形性関節症の診断と治療――保存的治療から再生医療まで
Ⅰ章.変形性関節症に関する基礎研究
2.変形性膝関節症の痛みの発生機序
Pain mechanism in knee osteoarthritis
阿漕 孝治
1
K. Aso
1
1高知大学整形外科
1Dept. of Orthop. Surg., Kochi Medical School, Kochi University, Nankoku
キーワード:
knee OA
,
pain
,
synovitis
,
bone marrow lesion
Keyword:
knee OA
,
pain
,
synovitis
,
bone marrow lesion
pp.506-510
発行日 2023年5月25日
Published Date 2023/5/25
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei74_506
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は じ め に
変形性膝関節症(膝OA)において,膝の痛みは医療機関をはじめて受診するもっとも多い主訴であり,日常生活動作(ADL)を著しく低下させる要因となっているだけでなく,痛み自体がOA進行の危険因子となる1).しばしば痛みによって活動性が低下し,廃用性の筋萎縮が起こり,関節症が進行し,さらに痛みが悪化するという悪循環に陥る.膝OAの治療では,早期にこの悪循環を断ち,病状の進行を阻止することが重要になる.しかし,大規模住民コホートResearch on Osteoarthritis/osteoporosis Against Disability(ROAD)2)によるとX線像上で膝OAがあっても2/3以上の人は痛みがなく,X線像でわかる膝の変形は実際に患者の主訴である痛みには直結しないなど,膝OAの痛み機序にはいまだ不明確な点が多い.膝OAの痛みは膝局所の異常による侵害刺激が自由神経終末から後根神経節を通り,脊髄後角の神経終末に伝えられ,シナプスを介して二次ニューロンに伝達され,脊髄を上行し,最終的に脳で認知される.痛みの重症度には,膝局所の病態だけでなく,精神的要因,肥満,遺伝因子などとも関係し,痛み自体が複雑な感覚である.本稿では,特に膝局所に注目した痛みの発生機序について述べたい.
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