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【要 旨】
目 的:関節固定術を行うと隣接関節の応力が増加し,結果として隣接関節の変性が進行することが指摘されている.腰椎は股関節の隣接関節と考えることもできるが,腰椎固定術後に股関節の変性が進行するか否かについてはいまだ不明である.本研究の目的は腰椎固定術後の股関節の関節裂隙狭小化率を測定し,脊椎固定椎間数と股関節裂隙狭小化率の関連を調査することである.
対象および方法:2011~2018年に当院で腰椎固定術を受けた患者を対象として後ろ向き観察研究を行った.股関節手術の既往,Kellgren-Lawrence分類Ⅱ以上の股関節変性,臼蓋形成不全,関節リウマチの症例は除外した.205患者(410関節)の関節裂隙狭小化率の計測を行い,性別,年齢,body mass index,脊椎診断名,左右,仙椎を含む固定の有無,固定椎間数の要因が関節裂隙狭小化率に及ぼす影響を調査した.
結 果:全患者の関節裂隙狭小化率は0.114±0.168mm/年であった.単椎間固定後は0.062±0.087mm/年であったのに対し,7椎間以上の固定後は0.307±0.254mm/年であった.多変量解析の結果固定椎間数[standardized coefficient(SC)=0.374,p<0.0001]のみが関節裂隙狭小化率上昇に相関していた.狭小化率を身長で除して体格の影響を補正したところ,女性であることも独立した狭小化率増加因子であった(SC=0.109,p=0.023).脊椎診断の影響を補正するために,椎間板変性の症例のみで多変量解析を行ったところ,女性(SC=0.138,p=0.033),固定椎間数(SC=0.454,p<0.0001)の二つが狭小化率上昇の危険因子であった.
結 論:脊椎固定術での固定椎間数が多いほど術後の股関節裂隙狭小化は上昇していた.術者は術後に股関節変性が進行する可能性を考慮して,多椎間の固定を検討している患者には説明しておくべきかもしれない.
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