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【要 旨】
目 的:スクワット動作は日常生活において重要な動作であるが,人工股関節全置換術(THA)後には脱臼やインピンジメントの発生が危惧され,これまでTHA後のスクワット動作の報告は少ない.本研究では,THA後のスクワット動作の実施率とスクワット時の生体内動態を調査した.
対象および方法:初回THAを受けた患者にスクワット動作に関する調査票を郵送し,328例の患者から回答を得た.さらに,そのうち32例についてイメージマッチング法を用いてスクワット時の三次元動態を評価した.多変量解析により股関節最大屈曲時の前方ライナー・ネック間距離との関連因子を調べた.
結 果:スクワット動作が容易に可能と回答した患者は術後に有意に増加していた(23.5%対46.0%,p<0.01).29.6%の患者はTHA後もスクワット動作を行っておらず,主な理由は脱臼への不安であった(41.2%).動態解析では股関節の最大屈曲角は平均80.7°±12.3°,骨盤の後傾角度は平均12.8°±10.7°,前方ライナー・ネック間距離は平均9.7±3.0mmであった.ライナー・ネック,骨・骨,骨・インプラント間の接触はいずれの股関節にも認められなかった.股関節屈曲が大きいこと,およびカップ前捻が小さいことは,最大股関節屈曲時の前方ライナー・ネック間距離と有意な負の関係にあった(p<0.01).
結 論:術後約70%の患者は容易に,あるいは支えがあればスクワット動作が可能であった.患者は脱臼への不安のためTHA後のスクワット動作を避けていた.スクワット時の三次元動態解析ではインピンジメントや脱臼の危険性はないと考えられるが,過度に大きな股関節屈曲や小さなカップ前捻はリスクとなりうる.
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