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は じ め に
2021年5月19日より,変形性股関節症(股OA)と変形性膝関節症(膝OA)の医療保険適用注射薬として,ジクロフェナクをヒアルロン酸ナトリウム(HA)に化学的結合させたジクロフェナクエタルヒアルロン酸ナトリウム(DF結合HA)が発売されている.
以前,53例の膝OA患者をDF結合HA群とHA群に無作為に分類し,その効果を比較した1).その結果,1日平均歩数は,DF結合HA群がHA群に比べて有意に増加したと報告した.しかし,2021年6月1日にDF結合HAの使用について厚生労働省からアナフィラキシーなどの重篤な副作用の注意が喚起された2).
アナフィラキシー発症患者では80%以上の症例で皮膚所見が認められる3).しかし,DF結合HAによるアナフィラキシーショックの報告に皮膚症状(蕁麻疹,掻痒症,湿疹,発疹,紅斑)が記載された症例の割合は86例中9例(10.5%)であった.また,製造販売業者が詳細に調査を行っても原因物質は不明であった4).
一方,アナフィラキシーと同様の症状を呈するがIgE抗体が関与せず,抗原が直接肥満細胞や好塩基球を活性化させて脱顆粒が生じるアナフィラキシー様反応はハチ刺されといった侵襲的な疼痛曝露によっても生じる.
DF結合HAのpHは4.8~5.4であり,従来のHA(pH 6.8~7.8)に比べてpHが低いことによって注射時には強い疼痛を訴える患者が多い5).筆者は,DF結合HAの副作用の原因の一つは従来のHAより注射時痛が強いことであるとの仮説を立てた.そこで,疼痛を緩和するために局所麻酔薬を混合して注射することにした.なお,DF結合HA発売以前には,疼痛が強い時期の股OA患者に対して筆者は副腎皮質ステロイドであるトリアムシノロンアセトニド(TA)を関節内注射していた.
本研究では,25例の股OA患者に4週ごとに3回局所麻酔薬混合DF結合HAを注射し,その効果を後ろ向きにTA注射経験群と未経験群の間で比較した.
© Nankodo Co., Ltd., 2022