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は じ め に
従来は「軟骨の変性,摩耗による非炎症性疾患」と考えられていた変形性関節症(OA)であるが,新たな知見の集積によって病態解明がすすみ,現在では軟骨だけでなく骨,靱帯,滑膜,筋肉,神経が発症から進行まで複雑に関与する “whole joint disease” としてとらえられ,その発症および進行に炎症が関与していることが明らかになっている1).
現時点でコンセンサスの得られた変形性股関節症(股OA)の定義および診断基準は存在せず,Kellgren-Lawrence(K-L)分類などのX線所見による診断基準や米国リウマチ学会(American College of Rheumatology:ACR)の臨床症状に血液検査所見を加味した診断基準がある.
股OAの治療は,運動や薬物療法などによる保存的治療を基本とし,十分な効果が得られない場合には手術的治療を考慮する.近年における海外のガイドラインでは,症状緩和と機能改善に対する治療として,運動や理学療法に加えて患者教育が重要視されており,薬物療法では経口非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)とステロイド関節内注射が推奨されている.現在,OAに対する病態修飾薬として承認された薬剤はなく,発症と進行を抑えるためには体重管理と外傷の予防が重要である.手術的治療では,人工股関節全置換術(total hip arthroplasty:THA)におけるロボット支援手術が普及し始めている.また,術後早期からの機能回復および社会復帰におけるリハビリテーションの重要性が再認識され,THA後の動作制限指導の是非について検討がなされている.
本稿では股OAの診断および治療法に関する最近の話題について,疫学と病態,海外におけるガイドラインの現状を交えて紹介する.
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