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【要 旨】
目 的:2009年日本脊椎脊髄病学会(JSSR)モニタリング委員会において前向き胸椎後縦靱帯骨化症(T-OPLL)での術中モニタリング調査を行っており,アラーム時における適切なレスキュー操作が術後麻痺予防に向けて特に重要であるとされている.本研究の目的は,T-OPLL手術例のうち術中波形悪化例について,レスキュー操作の有効性を前向きに検討することである.
対象および方法:2012年1月~2018年12月にJSSR脊髄モニタリングワーキンググループ関連施設でT-OPLL対してTc-MEPを施行した197例のうち,術中波形悪化を生じた79例(男性35例,女性44例,年齢54.6歳)を対象とした.Tc-MEPは麻酔条件,記録条件,アラームポイント(コントロール波形の70%以上低下を波形悪化)を統一して施行し,検討項目は,術前波形導出,術中波形変化とレスキュー操作後の麻痺の有無とした.
結 果:術前麻痺[徒手筋力テスト(MMT)≤4]は59例(75%)に認めた.手術開始時の波形導出は母趾外転筋(AH)でもっとも高く[84%(66/79例)],76例(96%)では1筋以上の下肢筋導出を認めたが,4%(3例)で下肢全筋導出不能であった.術中に下肢全筋の導出不能は19例(24%)に認めた.アラームは,主に除圧中(47例),展開中(13例),ロッド締結(5例),体位変換(4例),スクリュー刺入時(4例),後弯矯正(2例)で生じ,レスキュー操作として主に後弯矯正,片側ロッド取り付け,除圧が行われた.レスキュー例(波形回復,術後麻痺を回避しえた症例)は45例で,レスキュー率は57%(45例/79例)であった.2群間比較[術後麻痺例(n=34)/レスキュー例(n=45例)]において,レスキュー例の有意な因子は,術前独歩可能例(84%/54%),高い術前AH波形導出(69%/97%),術中全波形消失せず(38%/13%)であった(p<0.05).
結 論:術中波形悪化は,展開中,スクリュー刺入時,棘突起切除後,除圧中など多岐にわたっており,脊髄への圧迫因子だけでなく術中アライメント変化が波形悪化因子であることが示唆された.
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