Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに:整形外科における超音波診断装置の歴史1)
整形外科の進歩は画像診断の進歩と一致している.Roentgenが1896年にX線の発見を報告して以来,骨折を中心とした整形外科の画像診断・治療が飛躍的に進歩した.その後1941年にHounsfieldがCTの研究に着手し,30年後の1973年,CTが世に普及し始めた.CTの普及は骨内部の詳細な評価を可能とし,整形外科疾患の病態理解がさらにすすんだ.また,3D画像の構築ができるようになり,変形性関節症などの慢性疾患に対する人工関節手術など,現在行われている整形外科手術を飛躍的に進化させた.そしてCTの研究と同時期の1946年に,米国の物理学者であるBlochとPurcellによりMRIの基礎原理である核誘導と核磁気共鳴の研究が行われた.それをヒントにした英国の物理学者Mansfieldは,1973年に磁気による断面画像の撮影に成功し,1980年代にMRIとして普及し始めた.MRIは,X線,CTでは描出できない軟部組織の詳細な描出を可能にした.これにより,関節鏡視下手術など低侵襲な軟部組織の手術が飛躍的に進歩を遂げた.
超音波診断装置(エコー)の研究が始まったのは1940年代である.1952年には現在使われている「Bモード装置」が開発され,世界ではじめて脳腫瘍と乳癌の二次元断層像を描出した.わが国では1958年ごろには骨折の診断,1966年には骨・軟部腫瘍の診断におけるエコーの有用性が報告された2).これが今日の整形外科領域の超音波診断の先駆けとなった.しかし,当時は手作業による画像処理であったため,時間と手間がかかり,それ以上広く臨床応用されなかった.1971年,臨床応用を加速する技術が入江氏らを中心とした日本無線医理学研究所社(現富士フィルムヘルスケア社)[東京]によって開発された.これが現在の電子リニアプローブである.電子リニアプローブは,身体内部をリアルタイムに描出することを可能にした.また,血流を測定するドプラモード,歪みを観察するエラストグラフィなども日本から生まれた技術である.診療で用いられているエコーの技術は,日本で開発され進歩した技術である.そのため,国内では早期に小児股関節,脊椎術中エコー,関節リウマチ(RA)などを中心に使用され,2000年ごろから肩腱板損傷,足関節捻挫などの診断に多く使用されるようになった.そして,近年では今まで診断・治療できなかった痛みへの治療やリハビリテーション治療への応用にまで,その幅は広がっている.整形外科学の新しい診療ツールの一部として活躍している.
© Nankodo Co., Ltd., 2022