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は じ め に
整形外科診療において,画像診断装置は多くの有用な情報を提供する.1895年に発見されたX線は,整形外科疾患の診断,治療に革命的な進歩をもたらし,現在でももっとも汎用される医療診断技術である.さらに,CTやMRI,超音波検査,核医学診断装置の開発は,人体の複雑な解剖や機能的な障害に対する三次元的な評価を可能とした.一方で,MRIや超音波を除く画像診断では被曝を伴うために被曝量を最小限にする注意が必要である.また,運動器の機能的な評価には撮影肢位が重要であるため,臥位で撮影した画像での機能評価は一定の限界があることを理解する必要がある.
sterEOSイメージングシステム(EOS imaging社,Paris)は,1992年にノーベル物理学賞を受賞した粒子検出器を応用することで,荷重時や坐位における脊椎,骨盤,下肢アライメントの三次元的評価が可能な低被曝画像診断装置である.本法は低被曝線量での撮影であるため,患者の全身の骨形態と機能的アライメントの評価が被曝による健康被害を最小限にしながら可能である点が特徴であり,さまざまな部位における運動器疾患の経時的な評価に有用である1,2).また,散乱X線を抑制しつつ高感度で画像が獲得できるため,通常の単純X線像と比較して全身の鮮明な撮影画像を歪みなく評価できることや,荷重下における全身の三次元的なアライメント評価が高い再現性で可能であること3~7),人工関節や骨折治療術後の下肢アライメント異常の患者に対して金属ハレーションの影響を受けずに姿勢の評価やインプラント設置角の評価を正確に行えることなどが利点である8).
EOSで撮影した2方向全身X線画像は,専用のソフトウェアであるsterEOSワークステーション(同社)を使用して,脊椎,骨盤,大腿骨,下腿の3D再構成画像を作成しパラメータを計測する(表1,図1).これらのパラメータは計測の基準面を解剖学的および機能的基準面に分けて設定し計測することが可能である9).
現在われわれは,主に股関節疾患患者に対する立位と坐位での骨盤・下肢アライメントの三次元的評価にsterEOSイメージングシステムを用いており,その有用性に関して報告する.
© Nankodo Co., Ltd., 2022