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は じ め に
仙腸関節由来の疼痛は腰痛に占める割合の約10~25%1,2)であり,若年者から高齢者までの男女に発症すると報告されている.仙腸関節は可動性の低い関節であるが,日常生活動作や職務動作が仙腸関節において,関節のわずかなずれ(位置異常)が生じ,仙腸関節性疼痛の一因となる1).
疼痛除去テストは仙腸関節制動操作を実施し,この位置異常を修正することで疼痛の軽減をみる仙腸関節障害の病態評価のために考案されたテストである.仙骨前傾,寛骨後方回旋偏位をうながすことで疼痛軽減するものをカウンターニューテーション型,仙骨後傾,寛骨前方回旋偏位をうながすことで疼痛軽減するものをニューテーション型とした(図1).仙腸関節制動操作の方法は図2に示す2).疼痛除去テストの型より,その方向に力を加え,矢状面上における関節反応変化を導いた結果,疼痛が改善すること,そのアライメントを考慮した運動療法が有効であること3)をわれわれは経験している.また当院では,仙骨と寛骨の位置関係を客観化するため,体幹中間位,閉脚立位での立位単純X線骨盤正面像において上前腸骨棘(ASIS)から床面に対して平行に仙腸関節までの直線距離を比較し,左右差を認める症例が多い事実を見出した(図3).水平面上で仙骨に対して寛骨が内旋する内方腸骨(インフレア),仙骨に対して寛骨が外旋する外方腸骨(アウトフレア)[図4]は,筋肉の不均衡や股関節回旋の左右差などから起因し,インフレア,アウトフレア自体での動きはまれとされている4).従来,インフレア,アウトフレアは,臥位でASISを触診し,臍からASISまでの直線距離の左右差をみて評価されていたが5),触診での評価は信頼性が低いという報告がある6).当院の診療放射線技師によると,臥位での単純X線像において正確な水平面を撮影することが困難であるとの指摘もある.そのため,立位単純X線骨盤正面像のアライメント評価と仙腸関節性疼痛との関係が明らかになることにより,仙腸関節性疼痛の診断,その後に続く運動療法の一助になると考える.
そこで本研究では,当院外来通院中の整形外科専門医により仙腸関節性疼痛と診断された女性患者10例のなかから,立位単純X線像のアライメントと疼痛除去テストによる型の関係性を検討し報告する.
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