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は じ め に
仙腸関節は仙骨と腸骨で構成される滑膜関節で,周囲は強固な靱帯に囲まれ,可動は制限されている1).仙腸関節はわずかな可動域を有すことで脊柱の根元で衝撃吸収装置として機能していると考えられている2~4).繰り返しや不意の動作で関節の微小な不適合が生じると周囲靱帯の緊張が高まり,靱帯内に分布する神経終末が刺激され5,6),疼痛が発症すると考えられている.以上から臨床では仙腸関節後方靱帯領域へのブロックのほうが,関節腔内へのブロックよりも効果が高く,診断と治療に有効である7,8).
仙腸関節の動きは仙骨の前屈運動(nutation)と後屈運動(counter-nutation)と,それに連動した腸骨のinflareとoutflareで構成される(図1)9).仙腸関節周囲靱帯のうち,仙骨の前屈時に仙結節靱帯(sacrotuberous ligament:STL)が緊張し,後屈時に長後仙腸靱帯(long posterior sacroiliac ligament:LPSL)が緊張してこれらの動きを制限するといわれる(図2)10).これまでLPSLは仙腸関節部痛の重要な発痛構造として注目され,その神経支配や神経の走行11~13),超音波装置での靱帯描出手技が報告されてきた14,15).われわれは2012年以来,仙腸関節由来の痛みに対して,特にLPSLに超音波ガイド下にブロックを行い,診断と治療を行ってきた16).しかしながら,これまでLPSLのブロックを目的に注入した局所麻酔薬の実際の浸透部位,範囲は不明確であった.
本研究ではLPSLブロックの精度を高めるため,献体を用いて超音波ガイド下でLPSLへ薬液を注入し,浸透部位および最適な注入量を解剖学的に検討した.
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