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は じ め に
近年,超音波診断装置が注目を集めている.特に骨・筋肉といった運動器分野においては,“運動器エコー”1)という名のもと,整形外科医だけでなく,理学療法士にも注目され,使い方に焦点をあてた特集が組まれるほどになっている2).病変の同定だけでなく,“エコー下運動器の治療” ということで,関節内に確実に注入できる手技の紹介3)や,関節外においても,“ハイドロリリース” という筋肉へのアプローチも散見されるようになってきた4).運動器分野における超音波診断装置の利用の範囲拡大など,利用の仕方が新たに出てくるエビデンスとともに決まっていく時代になってきたと考える.
そのような背景のなか,超音波診断装置使用時のプローブと皮膚との間に介在させるいわゆる超音波検査用ゼリーについても言及があり,運動器エコーの場合,ゼリーは腹部エコーなどと比べて硬いもの,つまり粘性が高いものを使用することを推奨する報告が出てきている1,5).理由としては,プローブと皮膚との間隙が容易に埋まることや,骨性の凹凸が多い足関節の観察も容易になる,体表近くの血流評価のときにプローブの当て過ぎによる血流評価への悪影響を防げるといったことがあげられる.しかしながら,今のところどの程度の粘性が望ましいのか,どの程度違うのかなどは明らかになっていない.理論上は粘性が低いものであれば,塗布時に容器先端の間口が一定で塗布の排出速度が一定なら,液体は広がりやすくなるはずであるが,これを評価する手法について明らかになっていなかった.
そこで,本研究では,3Dバイオプリンタを用いて市販の4種類の超音波検査用ゼリーを使用して,同一の形状を印刷し形状を評価することで,ゼリーの粘性を評価することとした.3Dプリンタによる造形物は,手術ガイドとして整形外科分野でも広まってきているので馴染み深くはなってきているが6),3Dバイオプリンタはそれとは少し異なる.3Dバイオプリンタは,再生医療分野で最近注目を集めているもので,主として細胞が成長するときの足場(スキャフォールド)を印刷・製造できるものとなる7).一般の3Dプリンタ同様さまざまな印刷の方法があるが,本研究では空気圧によって,中の材料を押し出し積層させ3次元の物体を作成する,いわゆる押し出し式のものを用いた7,8).
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