呼と循ゼミナール
血流の見掛けの粘性
谷口 興一
1
1東京医科歯科大学第2内科
pp.582
発行日 1974年8月15日
Published Date 1974/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202652
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血液は血漿に血球成分が浮遊している液体つまり懸濁液であり,特殊な流体と考えられる。流体は固体と異なり,変形に対してほとんど抵抗が感じられず,自由自在に流動することから命名されたのであろう。流体は粘性を考慮に入れない完全流体と粘性を考えに入れた粘性流体とに分けられるが,血液は粘性流体の特殊なもの,つまり粘弾性流体と考えられる。一般に粘性流体は変形の与え方の速さ,つまり変形速度とそれに対応して生ずる抵抗,すなわち応力との関係によって分類される。同一流体でも変形の与え方の速さによっては,かなり異なった抵抗を呈し,粘性は著しく変った態度をとる場合がある。
一般に速さuが座標zの関数としてあらわせるようなχ軸に平行な流れにおいて,流体にずり変形を起こす力をずり応力(せん断応力)τと称し,それによる流体の変形速度の度合du/dzはずり速度(せん断速度),あるいは速度勾配といわれる。一般にずり応力はずり速度ezx(du/dz)の関数で,流動特性といい,ずり応力とずり速度の関係を示す図は流動曲線と呼ばれる。流動特性から流体を分類すると次のようになる。
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