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はじめに
さまざまな分野において,3Dプリンタの活用が広がっている.たとえば,教育分野では,教科書上等の2次元平面では理解しにくい立体図形を,3Dプリンタで実際に造形することで学生のイメージ形成の一助とし,苦手分野の克服のために利用されている.また,医療分野でも,CTやMRIによって撮像された人体を3Dで再現し,診療や研究の効率化に貢献する等,さまざまな用途で3Dプリンタが利用されている.
リハ分野においても例外ではなく,3Dプリンタを用いたトレンドがある.たとえば,手指の創外固定器の作製や難病を患った対象者が独力でパソコンを操作するための工夫が凝らされたマウスの自助具等で3Dプリンタが利用された前例がある.しかしながら,他の分野に比べるとまだまだ3Dプリンタが普及しているとは言い難く,今後さらに多くの利用事例が増えることが望しい.
さて,作業療法分野において,対象者が望む作業を実現するための手段の一つとして,自助具の作製がある.自助具は近年,adaptive technologyとも呼ばれ,世界的にも環境と人,そして作業をつなぐ,OTにとっての大きな武器の一つと考えられている.しかしながら,自助具の作製は,OT個人の発想や手先の技術力に依存しており,すべてのOTが標準的に対象者に必要な自助具を作製できる状況とは言い難い.
そこで,図面データを共有することで,再現性高く,同じ道具を作製できる3Dプリンタを用いれば,OTの個人因子に左右されずに,多くの対象者が標準的な自助具を手にすることができるのではないかと考えた.今回,本稿では,OTが3Dプリンタを使いたい,そして,病院の備品として3Dプリンタを設置したいと考えるきっかけとなるよう,3Dプリンタで自助具を作製する際の基本的な事項や,すでに作製した自助具の紹介,さらには作製の手順について記載する.
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