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は じ め に
肩関節疾患のなかで腱板断裂は中年以降に約3割の有病率を示す代表的な疾患である1,2).腱板断裂の治療方針は,断裂形態や患者の活動性に合わせて保存的治療または手術的治療が選択される3).手術における第一選択は,機能解剖学的な修復をめざした一次修復が行われるが,鏡視下腱板修復術(arthroscopic rotator cuff repair:ARCR)後の20~30%に認められる再断裂率が問題となっている4).
再断裂の要因は,ARCR後3ヵ月以内であることから,この時期に起こる力学的ストレスが注目されている5,6).腱板断裂術後3ヵ月以内の力学的ストレスの軽減には,肩装具を術直後から装着し,肩関節を外転位に保持する後療法が用いられる.腱板断裂のガイドラインでは,肩装具や通常のスリングにおいて修復腱の治癒に与える臨床的なデータがないと報告されているが7),肩装具のバイオメカニクス研究において,修復腱にかかるストレスが最大90%軽減できると報告され,腱板再断裂の予防効果が期待されている8).ARCR後3ヵ月以内の力学的ストレスの増強は,術後早期からの他動運動の開始や術後数週からの自動運動と徐々に修復腱に力学的ストレスがかけられていく5,7).他動運動の開始に関しては,近年の統合解析から広範囲腱板断裂で関節可動域運動の開始を遅らせるべきであると報告されている5).
肩装具の報告としては装着期間,装具の改良,装着感や入浴用装具などの報告が散見される9~11).しかし,再断裂の多い術後3ヵ月以内に肩装具が除去されるにもかかわらず,肩装具除去後の問題や不安は検討されていない.そこで本研究では,ARCR後の肩装具除去後,日常生活のどのようなことに不安を感じるかを明らかにすることを目的とした.これは看護師,理学療法士,作業療法士がARCRへの関わり方を考える一助となりうる.
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